標準化仕様について③「標準化のプロセス」

ETSI  NFV  ISGの標準仕様は、どれが基本仕様でどれが必須のAPIかなどの濃淡は言及されないことが多い。その背景について、標準化の進め方を踏まえながら説明する。

合議制

標準化は基本的に合議制が採用されている。特にETSIの場合、参加者は会社の代表として扱われ、各提案は全員一致制での採決となる。そのため、反対者が1人でもいると提案は承認されず、議長からは「Are there any comments or question?」→「Are there any objection?」→「Approved」という流れで採決を取られる。

言い方を変えれば、サイレント(発言なし)は賛成という意味になる。そのため、採決時に発言をせずに承認された場合、それは賛成しているということになり、その提案をひっくり返すことは大変難しくなる。

他団体ではVote(投票)によって決めるところもあり合議のレベルは団体毎に異なるが、基本的には標準化団体は合議制が取られている。一方で、Open  Sourceの場合はソースコード(Code)をレビューしたReviewerがGoodを付与してN Good以上であればCodeを本体にMergeされるということが多い。

Work Item(WI)と標準化ドキュメント

標準化の場合、多くの場合最終生産物は標準仕様というドキュメントであり、そのドキュメントを作成するための活動がWIと呼ばれる。WIには、そのWIのリーダー(ドキュメントの場合は編集者(Rapporteur))が立候補制で選ばれ、リーダーはドキュメントの作成計画をたて、各社が提案しやすい環境を作り、承認された提案をドキュメントに反映するという作業を行う。

ETSIの場合は、4社以上の参加企業が合同(Supporting  Company)でWIの提案を行い、Supporting CompanyからRapporteurが選ばれる。WIが承認されると、提案者(Contributor)が該当ドキュメントに仕様として記載したい提案(Contribution)を持ち寄り、標準化メンバーで議論して承認を行う。承認(Approved)された提案はそのままドキュメントに反映され、反対によって否決(Noted)または取下(Withdrawn)されるとその提案は破棄される。ほとんどの場合はNotedにはならず、提案の修正(Revise)、または、取下(Withdraw)の選択を迫れることになる。一部折り合いがつかない提案部分がある場合は、折り合いがつかないことと期待する再提案の内容をEditor‘s  Noteとしてつけて、該当箇所だけ再提案できるようにすることもある。

標準化の進め方と仕様の関係

提案者や編集者はETSIから業務委託を受けているわけでもなく、無償でのVolunteerである。つまり、標準化は各企業のVolunteerによって支えられていることになる。このように、Volunteerによる標準仕様の維持と、合議制による承認プロセスが背景となり、

  • 合理的な理由なく他社提案を反対することは難しくなる。そのため、自社に関係ない提案の場合は“放っておく“ことが多い。
  • Volunteerによる標準仕様推進のため、特にETSIからの指示はなく、Contributor次第での進捗や方針になる。そのため、各ドキュメントのスケジュールや品質にばらつきが出る。
結局のところ、使いたい企業がVolunteerで標準仕様を推進するため、利用者が多い標準仕様ほど品質が良くなるが、逆に利用者が少ない標準仕様は提案数が手薄になり品質が下がることがある。

国内だけの製品やサービスは今後少なくなってしまうと思うので、日本にとって有利な仕様を日本人皆で協力して進めていく必要性が増えてくるだろう。

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