標準化仕様について①「基本仕様の見分け方」
少し前から、通信の世界では仮想化がトレンドになってきており、総務省のWhite Paperを見ても、5G以降の世界ではクラウドネイティブ、仮想化、AIが主要技術と位置づけられている。本日はグローバルで通信の仮想化を推進している標準化団体であるETSI NFVについて紹介したい。
通信の仮想化
CMでお馴染みの楽天をはじめ、ドコモ、au 、Softbankと全モバイル事業社が仮想化を謳っている。共通していることは、専用装置から脱却し汎用サーバを利用することである。元々携帯電話のネットワークは、携帯電話と電波で通信する基地局、通信の回線を接続する回線交換機、そしてそれらを結ぶ伝送路で構成されており、基地局と交換機は専用装置を利用している。これらの基地局や交換機を仮想化技術によりエミュレートすることで、物理装置に依存せず携帯電話のネットワークを提供できるようにすることが通信の仮想化である。
物理装置非依存になることで、物理装置はクラウドデータセンタで利用されているような安価な汎用サーバを利用できるようになり、装置単価の削減と運用の簡易化が期待できる。一方で、専用装置をソフトウェアでエミュレートしているので専用装置より性能や信頼性で問題が出る可能性がある。この仮想化の効果を高めつつ、仮想化の弱点を補完する仕組みがNetwork Function Virtualization(NFV)であり、このNFVの仕様を策定・推進している組織がETSI NFV ISGである。
ETSI NFV ISGの基本仕様
ETSI NFV ISGのサイトにも記載されている通り、ETSI NFV ISGのドキュメントは100を超えており、この全容を理解することは非常に大変な作業である。ETSI NFV ISGの仕様(NFV仕様)入門としてはETSI NFV ISG 副議長の中島氏の講演資料が分かりやすいだろう。
NFV仕様は、専用装置に対して人手で行われていた設置〜修理〜廃棄の一連の作業(ライフサイクル)をVirtual Network Function Lifecycle Management (VNF LCM)と呼んでAPI化することをコンセプトとしている。VNF LCMを実現するためには、仮想化技術によってエミュレートしている仮想リソースの管理機能(Virtual Infrastructure Management (VIM))と、VNFの必要な仮想リソースとVIMが提供可能な仮想リソース量(キャパシティ)を管理する機能(NFV Orchestrator(NFVO))、VNF LCMを管理する機能(VNF Manager(VNFM))で構成されており、これらを総称してManagement And Network Orchestration(MANO)と呼んでいる。MANOが提供しているVNF LCMのAPIはNFV-SOL 002、NFV-SOL 003に記載されているおり、こちらから読み始めると理解しやすいだろう。
- 設置:Instantiate VNF
- 修理:Heal VNF
- 増設/減設:Scale VNF
- 廃棄:Terminate VNF
- VNF LCM実行時の失敗:Error-Handling
コメント
コメントを投稿