VNFMとは?
仮想化された交換機等のテレコム設備(VNF: Virtualised Network Function)の管理機能部としてETSI-NFVではVNFM(VNF Manager)が定義されている。VNFMの主な役目としてVNF LCMを行うというものがあるが、VNFMが入ることでNFVOやVIMとの機能的な違いが分かりにくくなっている。VNFMの役割とは何だろう?
ETSI-NFVにおけるVNFMの役割
ETSI GS NFV-MAN 001の過去の提案資料(寄書)や議論状況を見ていると、どうやら以下のような考え方で機能部を検討してきたようだ。
- テレコム設備(Network Function)の仮想化(VNF)
- Compute/Storage/Networkの仮想リソースプール化(NFVI: NFV Infrastructure)
- 複数のNFVIの管理/クラウド化(VIM: Virtual Infrastructure Manager)
- 複数のVIMのキャパシティ管理と既存保守機能部(OSS: Operation Support System)の接続と自動化(NFVO: NFV Orchestrator)
- 既存のNFのOAM部(EM: Element Manager)やVNFの仮想化に伴う不足機能の補完(VNFM)
MAN001の議論状況だけ見ると、上記の通りNFVOとVIMしかなかったようだ。MAN001の発行直前に、既存のVNF/EM/OSSと新機能部であるNFVO/VIMの不足機能を補完するためにVNFMが定義されている。
問題はこの“不足機能“とは何かが不明瞭なため、VNFMは様々な機能部との境界ラインが曖昧になってしまっている。
VNFMの機能
ETSI GS NFV-IFA 010を確認すると、VNFMが保持する機能としてはVirtualised Resource (VR) Mgmt、VNF LCM、VNF Config Mgmt、VNF Info、VNF FM、VNF PM、VNF Indicator、Policy Mgmt、Snapshot Mgmt、VNF workload Mgmtがある。VNF LCMやVNF workload MgmtはNFV-Tacker workshopのレポート「NFV#34会合サマリとNFV-Workshop」にも一部記載している。
- VNF LCM/VNF Info/VNF FM/VNF PM/VNF Indicator: NFVO vs VNFM
- VIM(OpenStack等)やCISM(Kubernetes)に対して、OSSからのリクエストに基づいてVNF/CNFのDeploy/Update/Terminate (VNF LCM)をするだけであれば、実装上はNFVOまたはVNFMが Proxyとなってしまい機能部が重複する
- ETSI-NFVの仕様としては、VNFの外までがNFVO、VNFC単位の制御やVNFの内部NWなどのVNFの内はVNFMという機能分担になっている
- また、VNFMはクラウド(VIM)の性質を意識しないで済むように、NFVOがVIMを制御し、必要な情報はVIM AssetsとしてNFVOからVNFMへGrant Response等で渡すことになる。
- VNFMはNFVOから渡された“抽象化された情報“を基に、VIMと接続しながら仮想リソースの制御(VR Mgmt)を組み合わせてVNF LCM/VNF FM/VNF PMを実現している。
- VR Mgmt: VNFM vs VIM/CISM
- HeatやHelm-Clientは仮想リソースをStackとしてまとめて扱う(VNFとして管理)ことが出来るためとVNFMのVNF単位で仮想リソースを管理する機能部と重複する。
- VNFDを解釈して仮想リソースをVNF単位にまとめる機能部がVNFM、VNFという単位を意識せず仮想リソースの制御を行うのがVIM/CISMという機能分担になっている。
- VNF Config Mgmt/VNF Info: EM vs VNFM
- VNFのConfig設定や制御がEMと重複している。
- 現状では、VNFの中のAPLやMW等のConfigや制御がEM、Guest OSやVMの外がVNFMという機能分担になっている。
- ただし、実際にはCloud-initやConfigMapで設定を投入する場合はAPLやMW等のConfigも投入するため、ETSI-NFVで想定しているような機能分担にはならないことが多い。
- VNFMとして一番製品毎の機能差が出るポイントが、このVNF Config Mgmtであろう。
結局VNFMは“不足機能の補完“なので、実装レベルではVNF vs オペレーション/運用 vs Cloud/NW環境 の要件や特徴を合わせ込むことでOSS/NFVO/EM/VNFMの機能分担や実装を行うことになるだろう。その際、VNFを中心に考えVNFの機能や制限にNFVO/OSS/オペレーションを合わせる場合はSpecific VNFMとしてVNFMの機能を充実させることになるだろう。逆に、OSSからのオペレーションを中心に考え、VNFやCloud/NW環境を合わせる(Cloud Native)場合はNFVOの機能を充実させたりGeneric VNFMとして統一的な運用を目指すことが多いように感じる。NFVが始まった頃(2014年頃)はSpecific VNFMが主流であり、ETSI-NFV Release 2, 3もSpecific VNFMを前提にした仕様に感じるが、2019年頃からコンテナをはじめとしCloud Native化の検討や実装が始まったことでGeneric VNFMが叫ばれるようになってきた。
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