日本人は本当に働き過ぎ?

海外の人と一緒に仕事をしていると、国よって個人によって労働時間の考え方が違うとしみじみ感じる。一方で、先入観と実態が違うこともある。例えば、日本人は働き過ぎというイメージを自他共に持っているが、実際にはOECDのHours Workd(Timeの設定を変えることで主要国の1950年以降の労働時間を確認可能)や男女別にみた生活時間を見ても分かる通り、他国と比較してそこまで極端に多いわけではなく、むしろイタリアやアメリカより平均労働時間は短い。法律や企業文化、個人の価値観など様々な要因があるため一括りにはできないが、これまで一緒にお仕事をしてきた人を通して少しだけ労働時間の違いをお話ししたい。

アメリカ

アメリカは非常に広く、州によっても法律が異なるため地域によって労働時間の考え方は全く異なるようだ。私がお仕事でお付き合いした人は西海岸の方が多いが、“成果重視“であり、そのため“時間がかかる細かい作業はしない“という印象がある。役職についたり、大きなPJを提案推進したりするが、作業時間がかかる細い分析やドキュメント作りはあまりしない。標準化の場でも、仕様を決めていく上での進め方や方向性の話に関する提案は持ってくるが、実際のドキュメントの中身は細かくなる&事前調査に時間がかかる提案ほど持って来ず、他社の提案に意見を述べる形で進めようとする、

そのような仕事の仕方と関連があるかどうかは分からないが、アメリカの労働法はどうやら労働者を保護するための労働法ではなく、会社間の公正な競争という側面が強いようだ。企業間の競争に影響を与えるような労働単価などは規定があるが、労働者の働かせ方に対する規制は少ないと聞いている。また、基本的には雇用契約は“合意“に基づくものであり、ホワイトカラー(管理職や専門職)とブルーカラー(労働者)を明確に区別しており、ホワイトカラーは職務(Job Description)に基づいて雇用条件を合意しているらしい。職務に基づく雇用条件は基本的に年棒制らしいので、なるべく短時間で大きな成果をあげた方が企業も労働者もメリットが大きいので、企業も労働者も生産性を強く意識しているのかもしれない。

余談: アメリカでは合意(agreement)と契約(contract)は異なるらしく、contractは法律の延長であり強制執行可能らしい。

アメリカは祝日は少なく、Thanksgiving (11月第4週あたり)やクリスマス休暇(12月中旬〜12/25)だけ気をつけると、アメリカの祝日のために仕事が進まなかったという経験はあまりない。逆にアメリカの人からすると、日本は祝日が単発で多数あるため、予定を立てる上では困るようだ。

中国

中国も非常に広いため地域によって考え方に差はあるようだが、今まで一緒に仕事をした大都市(北京、深圳、上海等)の方々は日本と働き方が似ているように感じる。仕事の推進が最優先であり、必要があれば何時間でも真面目に働くイメージがある。雇用契約の考え方が、日本と同じく無期雇用を前提としており、労働時間ベースの給与体系なのかもしれない。中国企業の人と世間話をしたところ、時差も日本と似ているため、昼間は自社の業務、夜間は海外との電話会議でハードな勤務体系になっていると話をしていた。

そのような勤勉な中国人も、旧正月(春節)の休暇の取り方は日本と違うように感じた。中国の人は家族をとても大切にするようで、家族と一緒の時間である旧正月は絶対に仕事をしないようだ。

交渉の仕方、お仕事の依頼の仕方などは、かなり日本と違うが、勤務時間の考え方はかなり日本と同じような考え方だと思う。

ドイツ

ドイツは非常に真面目で、仕事をしっかり丁寧に遂行してくれるイメージがある。しかし、現在は雇用条件がびっくりするほど厳格に規定されており、残業時間や勤務時の作業スペースなど、事細かに法律で規定されていると聞いた。雇用契約も職務型(Job Description)なので年棒制でも良い気がするが、労働者保護のためにかなり厳格なルールがあるようだ。そのため、ある特定の時期に残業等をして頑張っていると、翌月残業時間や休暇の調整のために不在なんてこともザラにある。

余談:ドイツの地下鉄では改札機がなく、切符を確認されるタイミングは車内の見回りだけである。無賃乗車し放題に見えるが、数駅毎に見回りが来る上に、見回りにおいて正しい切符を買っていないと(購入ミスを含む)言い訳は全く通用せず、容赦なく罰金を支払うことになる。よく切符のミスで何十ユーロもの罰金を支払っている観光客を見かける。

解雇についても日本以上に厳しいルールがあるらしく、事業が多少傾いてもなかなか解雇できないと聞いた。日本も法律上は労働時間や解雇も規制されているが、ドイツは行政がしっかり管理・立ち入り調査しており、違反者は容赦なく罰則があるようだ。

厳格な労働時間の規制はお店や飲食店にも影響があるようだ。都市によって多少差はあるようだが、ベルリンやフランクフルトのような大都市と観光地以外は、日曜日は飲食店やスーパーも含めてほとんどのお店がCloseになる。その為、出張等でドイツに訪問した時は、土曜日のうちに食料を確保しておくか、観光地に行かないと日曜日は食事を取るのも大変になる。

また、個人情報の管理も厳格であり、休暇予定など日本では考えられない社員の業務上のことまで個人情報として扱われ、他者が知ることができない。そのため、例えば気軽に“次の休み“などを聞いて、意図せず個人情報を聞いてしまったり、それをどこかに転記して漏洩してしまうことがある。ドイツの人とお話しするときは、個人情報に該当しないか、どこまで転記可能か慎重に確認する必要がある。

フランス

フランスと言えばバカンスということで、夏場に2ヶ月休暇し、かなり優雅な生活をしているイメージがある。しかし、私が今まで一緒にお仕事をしてきたフランスの人は、確かに夏場は休みを取るが、それ以外はあまり休みを取らず、細部までしっかり資料を読んだり、議事録や課題表等も作ったりして、結構細かい仕事の仕方というイメージがある。フランスの雇用契約も無期雇用を前提としており、社員の解雇もかなり保護されているらしい。また、労働者の身分保護の表れかもしれないが、ストライキが盛んで、年に一回程度は公共交通機関が止まったりしているようだ。

一方で、ランチ時間を大切にするらしく、社員食堂でもしっかり前菜〜デザートまで揃っていた。場所によっては、ランチにワインも一緒に置いてあった。

スペイン

スペインはいつ仕事をしているか分からないほど、労働時間が短い。スペイン企業と会議した時は、遅くとも16時には切り上げるように要請され、ランチもしっかり2時間ほど確保していた。一緒に働いたスペインの人は利用していなかったが、地域によってはシエスタという昼寝の文化もあるらしい。16時になると、バルに行ってタパスを食べながらお酒を飲むというのがスペインの方の生活らしい。その後21時頃からディナーとのことで、レストランも開店時間は20時以降のお店が多いようだ。

余談:スペインと言えばパエリアが有名だが、パエリアはランチで食べるようで、夕飯では食べないと教えてもらった。また、パエリアを食べるときはスプーンではなくフォークを使うことが一般的らしい。

午前中に仕事をしているのか分からないが、とにかく勤務時間が短く、お酒と食事がメインの生活をしているように感じた。

このように見ると、日本が働き過ぎで、仕事が丁寧というのは過去の話かと思う。一緒に働いた方々は役職付の方が多かったので、他の労働者と働き方が異なるとは思うが、個人的には多くの日本人はスペインやアメリカの人よりは働いていると思うが、その他のヨーロッパや中国よりは働いていないと感じる。

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