VNF Lifecycle Management (LCM)とは?

NFVの登場によりLifecycle Management (LCM)というキーワードが頻繁に登場するようになったが、NFVの用語定義(NFV003)を見ても”set of functions required to manage the instantiation, maintenance and termination of a VNF or NS“としか書かれておらず、なかなか意味が分からない。NFVの仕様の基本であるLCMについて解説していきたい。

LCMとは?

 標準化仕様について①「基本仕様の見分け方」でも記載した通り、NFVの仕様の基本であり、仮想化されたNetwork Function(VNF)に対してInstantiation/Healing/Scaling/Termination等の制御を行うことである。元々はIT系のLCM  Serviceという考え方であり、それをNFVでテレコムやモバイル系装置にも同じ概念を適用したようだ。

NFVにおいては、これらの計画・設計 〜 導入・工事 〜 運用・更新 〜 廃止・撤去をそれぞれAPI化し、モバイルの運用でも利用可能なように機能を拡充している。IT系と異なる点としては

  • 仮想リソース(VMやVirtual Storage)の設定や設計をインフラではなく、Network FunctionのApplication  Provider (VNF Provider)が決めている
    • IT系では、Compute FlavourやGuest OSはインフラ提供者が決め、Cloudの運用効率最大化を指向することが多い
    • NFVでは、性能向上のためにGuest OSの使い方がVNF毎に特殊だったり、そもそも独自OSを利用していたりするため、Guest OSや仮想リソースの設定・設計(Descriptor)はVNF Providerが用意する
  • Cloudのネットワーク機能を利用せず、VNF自身がネットワークを制御する
    • IT系では、CloudのDNSやOverlay Networkingの機能を利用しApplicationはNetworkを意識しない方向で設計や運用をすることが多い
    • NFVでは、VNF自体がRouterのようなものなのでAddressingやTunnelingもVNF自身が行うため、CloudのネットワークはCustomer Edge (CE)までの土管だけ用意する

これらの特性から、NFVの世界では主に3つの管理装置(NFVO/VNFM/EM)によってVNFを制御する機能分担になっている。

Instantiationの手順

NFVの仕様でInstantiationを行うまでには、大きく4つのStepが必要となる。1〜3はETSI-NFVによって仕様が規定されており、ETSI NFV SOL016にシーケンスが記載されている。4は詳細な記載は無いが3GPP TS 28.526に記載されている。

  1. On-Boarding: Instantiationを始めるための事前準備
    • NS PackageやVNF Package (VNFDやVM image)をNFV-MANOに登録する
  2. Instantiate NS: Network Service (ネットワークの敷設やRouter/Switch等への接続設定)の構築
  3. Instantiate VNF: VNF(VMや仮想NWのまとまり)の構築
    • Instantiate NSのProcedureの中で行われる
    • Instantiate VNF処理を行うためにはGrantによって使用する仮想リソースの承認が必要である
  4. ApplicationのActivation: Network FunctionとしてのApplicationのインストールや設定
On-Boardingの処理イメージとしては、インストール資材(VM image)、仮想リソースの設計書(VNFD/NSD)、Configurationを管理装置であるNFV-MANOに登録する処理となる。また、Configurationの設定等のために、Create IdentifierによってNFV-MANOの中に管理情報を構築し、各種Configuration情報を登録できる。

続いてInstantiate NSによってNetwork Service (RouterやSwitchの構築や設定)がNFVOによって行われる。その後、Instantiate VNFためのGrant (Grant自体はInstantiate VNF RequestをVNFMが受け取った後に実行)によって、NFVOから必要な仮想リソースの資材が用意され、それらがVNFMに通知される。

その後Instantiate VNFによって、VNFMは準備された仮想リソースを利用してVMの作成やGuest OSのインストール、Network Serivceへの接続が行われる。

その後、TS28.526の通りVNFとEMが接続され、EMからVNFへApplicationのインストールや設定が行われる。なお、VM imageの作成方法次第では、ApplicationやMiddlewareもVM imageに入れておくことで、最小限の設定情報のみEMから更新することも可能である。


一般的なCloud上のVM構築と比べて分かりにくい点は、NFVO/VNFM/EMという3つの機能ブロックがそれぞれ分担してVMやNWを構築・設定を行うことと、GrantによってNFVOは資材の準備を行いその資材を利用するための情報とNetwork Serviceに接続するための情報をVNFMに通知することだろう。今回はInstantiationの解説を行ったが、SOL016やSOL003によって他のAPIの動作も確認が可能である。

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