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6月, 2021の投稿を表示しています

グローバル人材に向けて必要なスキルとは

国内での仕事の仕方とグローバル企業との仕事の仕方は違うと感じるが、最近そのGAPを感じる場面に何度か遭遇した。国内開発を主としていたチームがグローバル企業と議論する会議に何度か参加したが、「あ、これは伝わっていないな」と感じるケースがいくつかあった。開発業務から標準化業務に移った初心を思い出しながら、少しまとめてみたい。 グローバル企業から信頼を得るためには やはり最初に“お互いに信頼関係“を得ることが必要だ。信頼関係が無ければ表面的な協力関係かになり、なかなか効果的な議論や検討もできない。 何の意思決定ができるのか? 「 結論はCoffee  Breakで決まる 」で記載した通り、意思決定できる人でないとそもそも話を聞いて貰えない。 Title(役職)はよくチェックされている。日本よりTitleをこだわっているかもしれない。Titleには2種類の方向があるようだ。 管理職 : Manager (課長級) → Director (部長級) → Board (役員) 専門職(システム開発の場合): Developer (開発者) → Engineer(設計者) → Architect/Bridge (PJを跨いだ全体設計者)  これらに、senior → principal → general → executive → chief等がつくことで上位役職を指すこともある 日本の場合専門職系のTitleが充実していないため、グローバル企業からすると技術的な話の意思決定者が誰なのか非常に分かりにくいようだ。そのため、実際の役職にとらわれずに、自己紹介の時には、自分の責任範囲を適切に示す役職を自己紹介の時に伝えるようにした方が良い。 目的をはっきり伝えることができるか? 「 英語ができない私がグローバル人材!? 」の通り、BackgroundとGoalをちゃんと説明できる必要がある。その上で、「 グローバルでの交渉のコツ 」の通り、具体的に解決したい課題を明確に言える必要がある。 解決したい課題は具体的で、自社や日本の姿をしっかりとらえている必要がある。そのためには、マーケット規模を含むファイナンシャルな情報と、課題が与える影響の金額的な規模はしっかり数値で常日頃から把握しておく必要があるし、自社の業務やサービスもしっかり把握しておく必要がある。 現在問題...

O-RAN virtual Face to Face Meeting June 会合サマリ

  O-RANのWebサイト を見てもBlogやNewsがこの半年ほど更新されておらずなかなかO-RANの動向が分からない。O-RAN AllianceはETSIや3GPPと比較するとCloseなところで議論が進んでいる印象がある。O-RANの目的やNFVとの関係は「 O-RANが盛り上がってきた 」を、O-RANの各WGの内容はO-RANの「 About 」をご確認頂きたい。 O-RAN virtual Face to Faceとは O-RANの場合、ETSI-NFVのようなプレナリのようなものはなく、各WGが2週間集中的に会議を行っていた。また、時間を合わせてWGを跨いだJoint sessionもいくつも開催されていた。 しかし、プレナリが無いため、全体のレポートや各WGのドキュメントの最終版のようなチェックを各メンバーが行うような場はない。TSC等の一部の委員会で全体チェックをしているようだが、Publishされたドキュメントの品質差が激しく各ドキュメント間の関係も分かりにくいので、特定のメンバーで全体をチェックするのは相当大変だと感じた。 会合サマリ 今回は MVP (Minimum Viable Product)が制定されたことで、O-RANとしての最低限スペックの優先順位付がされた。本会合では、各WGにおいてMVPに沿った議論が行われたようだ。 WG1 (Usecase and overall architecture): 既存仕様についてはあまり大きな変更はなく、次のWhite Paperの準備。 WG2 (Non-Realtime RIC and A1): Non-RT RICのアーキテクチャを変更する議論が中心。A1等のインタフェース議論はあまりなかった模様。 WG3 (Near-Realtime RIC and E2): Slicing, Massive MIMO, xAppsのFCAPSを中心に、Near-RT RICのArchitectureとE2インタフェースも活発に議論。 WG4 (Open Front haul): M-Planeを中心に議論。ただし、他のWGと比較すると仕様が安定しているため、特定のパラメータに閉じた議論に見える。 WG5 (F1/W1/E2/X2/Xn): 議論ポイントも進捗も不明だが、3GPPの仕様をベー...

仮想化と監視運用自動化

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サービスを提供するサービスプロバイダー(モバイルオペレータ等)にとって運用の自動化は見果てぬ夢であるが、ETSI ZSM ISGを中心に監視運用の自動化が注目され始めている。特にDeep LearningをはじめとしてAI技術が実用レベルに来たこともあり、それを応用して監視保守を自動化したいようだ。 監視保守運用自動化の歴史 運用自動化の歴史は古く、インターネットが普及し始めた1980年後半以降、SNMPの仕様制定やAIの探求などによって各企業様々な方法で監視保守の運用効率化を行なってきた。背景にあるのは、メインフレームのような集中型システムから、ネットワークを利用した分散システムがトレンドになったことで監視対象が劇的に増えたこともあるだろう。1990年には IBMのTivoli 、2000年には NTTのHinemos といった運用自動化の走りのような製品が出始めている。自動化システムの特徴としては、大きく2つのアプローチがあるようだ。 正常なサービス状態を定義し、そこから外れたことを元に戻すためのアクションを行う(プロアクティブ監視) 様々なKPIや測定項目を定義し、各項目の正常値から統計的に外れた場合い異常と判断する 異常を検出した場合は、その差分(Delta)を埋めるRuleが差分を順次埋めて正常値(Desirable State)に戻す Tivoli 障害発生のイベントを登録し、イベントに応じた措置手順をシナリオとして定義する(ECAモデル) トリガとなるEventを定義し、各イベント毎に対応するシナリオを登録する 各シナリオの中では、Condition毎にActionを規定する JBoss 、 ナレッジシステム 『 GR NFV-IFA 042 』より プロアクティブ監視をベースとした自動化の場合、異常値を検出する手法は様々なツールや統計解析手法があるが、問題はDeltaを埋めるRuleとDesirable Stateのメンテナンスである。特にモバイルオペレータのように監視対象装置の種類が数十とあり、それも毎年のように新しい種類の装置が導入されたり機能が更新されると“Desirable State“をメンテナンスしきれない。その結果、Ruleも追従しきれず、結果としてプロアクティブな監視での自動化はなかなか大規模に展開されず、限定的な範囲でのみ利用されて...

海外モバイルオペレータの動向〜ヨーロッパ編

  海外モバイルオペレータの動向〜ビッグオペレータ編 の続きである。今回はヨーロッパにおける Open RAN MoU の主要オペレータを紹介したい。 Vodafone 世界27ヵ国に3億人ユーザを抱え、営業収益5兆円のグローバルオペレータ。 VodafoneのAnnual Report の通り、多くの国でテレコム(モバイル+固定)インフラを提供することで事業拡大を行なっている。多角化経営ではなく、土管に専念しつつ、その規模を拡大することで競争力を維持しているように見える。2020/2021年のVodafoneの活動としては Huaweiとのコアネットワークの取引停止 :トランプ政権による対中国網対策によるHuaweiバンの余波 5Gに向けたOpen RAN化: Open RAN labの開設 や QualcommとのOpen RAN競業 を行なっているようだ コスト効率化: vCloudを利用したテレコムインフラのコスト50%削減 や 2018年の新社長の方針 の通りコストカットを推進しているようだ 5G採用ベンダ:不明 やはり一番大きなポイントはHuawei排除の動きによって、投資が5GからHuaweiの代替えに向かったことだろう。その影響が大きいせいか、最近のVodafoneは5Gに関する動きが見えず、低迷している印象を受ける。一方でAnnual Reportの通りOpen RANとNetwork Sharingに力を入れているところから、低コストでエリアカバー率を上げる戦略を取っているのかもしれない。土管事業に専念しつつ、そのコスト効率化と土管事業の拡大戦略は、将来を見据えたインフラとして実直な方針に見える。 Telefonica 世界13ヵ国に2.6億人ユーザを抱え、営業収益5.7兆円のグローバルオペレータ。非常に強力なR&Dを保持しており、対外活動も非常に活発的でモバイル事業の技術リーダー的な位置付け。2020/2021年のTelefonicaの主な活動としては 5G公式発表 :2020年末でスペインのエリア人口カバー率は75% Edge computing:スタートアップの支援として Wayra の立ち上げ Open RAN:NECとOpen RANの共同実証( イギリス & ドイツ )、IBMとOpen RANの共同実証( アルゼンチ...