グローバル人材に向けて必要なスキルとは
国内での仕事の仕方とグローバル企業との仕事の仕方は違うと感じるが、最近そのGAPを感じる場面に何度か遭遇した。国内開発を主としていたチームがグローバル企業と議論する会議に何度か参加したが、「あ、これは伝わっていないな」と感じるケースがいくつかあった。開発業務から標準化業務に移った初心を思い出しながら、少しまとめてみたい。
グローバル企業から信頼を得るためには
やはり最初に“お互いに信頼関係“を得ることが必要だ。信頼関係が無ければ表面的な協力関係かになり、なかなか効果的な議論や検討もできない。
- 何の意思決定ができるのか?
- 「結論はCoffee Breakで決まる」で記載した通り、意思決定できる人でないとそもそも話を聞いて貰えない。
- Title(役職)はよくチェックされている。日本よりTitleをこだわっているかもしれない。Titleには2種類の方向があるようだ。
- 管理職: Manager (課長級) → Director (部長級) → Board (役員)
- 専門職(システム開発の場合): Developer (開発者) → Engineer(設計者) → Architect/Bridge (PJを跨いだ全体設計者)
- これらに、senior → principal → general → executive → chief等がつくことで上位役職を指すこともある
- 日本の場合専門職系のTitleが充実していないため、グローバル企業からすると技術的な話の意思決定者が誰なのか非常に分かりにくいようだ。そのため、実際の役職にとらわれずに、自己紹介の時には、自分の責任範囲を適切に示す役職を自己紹介の時に伝えるようにした方が良い。
- 目的をはっきり伝えることができるか?
- 「英語ができない私がグローバル人材!?」の通り、BackgroundとGoalをちゃんと説明できる必要がある。その上で、「グローバルでの交渉のコツ」の通り、具体的に解決したい課題を明確に言える必要がある。
- 解決したい課題は具体的で、自社や日本の姿をしっかりとらえている必要がある。そのためには、マーケット規模を含むファイナンシャルな情報と、課題が与える影響の金額的な規模はしっかり数値で常日頃から把握しておく必要があるし、自社の業務やサービスもしっかり把握しておく必要がある。
- 現在問題となっている表面的&短期的な課題や議論ポイントだけでは、実のある議論や協力依頼はできない。例えば、“現在問題となっている技術的課題を上げて、その解決案を聞きたい“というスタンスでは、相手企業はまともに取り合ってくれず、当たり障りのない回答を得て終わりになってしまうだろう。真に協力関係を仰ぎたければ、①マーケットを含む金銭的規模、②(現在の)業務/サービス分析結果、③(将来の)Visionや世界観と②の問題の技術的な関係や技術的解決案と自社のビジネス的スタンス、④話し相手のグローバル企業を含めた業界マップ、をしっかり理解する必要がある。
- 議論ポイントをロジカルにまとめられるか?
- 日本での仕事以上に社会人基礎力が求められているように感じる。
- Think(課題発見→解決案創造→計画)とそれを支えるロジカルシンキング
- 課題発見:理想 - 現実 = GAP として、GAPを掘り下げる力
- 解決案創造:MECEを利用したブレインストーミング → 各アイディアのPros(メリット)/Cons(デメリット)評価
- 計画力: プロセスへの分解 → スケジュール化
- Action(主体性+巻き込み力+実行力)とそれを支えるモチベーション
- 主体性:「仕事として会社からやらされている」ではなく“自分自身で解決したい課題“として主張する
- 巻き込み力:共通の目的の探求や、客観的事実に基づいた選択肢の評価、個人としての真の狙いの引き出しなど、各種ネゴシエーション術
- 実行力:予定通りに実績を積み上げる力とその予実管理。しかし、グローバル企業の場合はまずは実行力を理解して貰う必要があるので、これまでの実績による信頼と、今後も計画通りにやりきる納得できる理由の熱い説明の方が必要かもしれない
- Collaboration(発信力→傾聴力→調整力+リーダー的魅力)とコミュニケーション力
- 発信力:2の目的に合わせて、自分の意見を一貫性を持って主張し続ける力
- 傾聴力:Give and Takeの原則に従って、相手の考えやアイディアを引き出す力
- 調整力:相手の主張も含めて客観的なPros/Consを即時に行い、それに基づいて相手の目線で一つ一つ理解を合わせ、お互いの妥協ポイントを合意する力
- リーダー的魅力:相手の気持ちを考えつつ、自身の考えや特徴を十分に発揮し人に好かれる力
- 日本人同士の仕事では、Actionと調整力があれば何とか仕事を回せてしまうように感じる。それが背景にあると思われるが、国内で仕事していた人がグローバル企業と議論をするとき、発信力と傾聴力が物凄く弱く感じた。また、人によってはロジカルシンキングが苦手という人もおり、その場合はそもそも議論ができず話が噛み合わないように感じた。
- 互いの意見を尊重し、何がお互いの協力関係で大切であり、何は協力できず別々にやるかを感情論ではなく受け止められるか?
- 社会人基礎力の調整力やリーダー的魅力とも関連するが、真の相手の狙いを引き出しつつ、自社のゴールと相手のゴールを調整できる力が必要である。この時に、表面的な評価をしてしまったり、必要以上に自社に有利な論理展開をすると警戒されるため、客観的合理性に基づいてお互い納得できる共通的な評価をすることが必要である。
- 日本人の場合、協力できるポイントが減るに従って“仲間意識“のようなものが下がる傾向がある。実際に協力できるポイントが客観的事実としてどれだけ残るかと、社間としてお互いが協力関係を気付きたいかという気持ちは分けて捉える力が必要である。
グローバル人材に必要なスキル
前項の繰り返しとなるが、グローバル企業や団体と一緒に仕事ができるグローバル人材とは以下のようなスキル保持者だと思う。
- 社会人基礎力: Think + logical thinking、Action + motivation、collaboration + communication
- 特に国内での仕事が多かった人は、意識して獲得が必要なスキルは発信力だと思う。
- マーケット動向(営業的能力): 自業界&関連業界マーケット、業界マップや各社のポジション、技術トレンド、PEST分析結果
- “自分は技術屋“とか“自分は平社員“などと言うのは関係なく、最低限のマーケット規模と業界マップは知識として必要だと思う。特に国内で仕事をしていると財務の基礎知識や数値を知らない人も多いので、最低限の財務情報は把握しておかないとグローバル企業には相手にされない気がする。
- その上で、マーケットトレンドとして次の投資がどこに向かうかをある程度分析しておいた方が話を聞いてもらえやすい。
- 自社業務&サービスの分析(運用ノウハウ): 自社業務&サービスの価値、現在の課題と規模感、SWOT分析結果
- 他社とお話しするためには、自組織がどこか関係なく、まずは自社の事をよく知っておく必要がある。
- それらを支えるテクノロジーやソリューション(技術力): 自社システムのコンセプトやアーキテクチャ、他社の典型的なアーキテクチャと特徴、各構成要素で使われている技術要素と特徴・課題
- 営業や管理職問わず、自社と他社のアーキテクチャの特徴はある程度知っておかないと議論が続かない。
- 特に何が変えることができて、何は変えられないかは、技術者や営業問わず言えるようにしておかないと、議論にならない。
このように見ると、社会人基礎力を高めつつ、営業と技術の両方の側面で自社とグローバル両方で知見がある人がグローバル人材として活躍できるのでは無いかと思う。
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