海外モバイルオペレータの動向〜ヨーロッパ編
海外モバイルオペレータの動向〜ビッグオペレータ編の続きである。今回はヨーロッパにおけるOpen RAN MoUの主要オペレータを紹介したい。
Vodafone
世界27ヵ国に3億人ユーザを抱え、営業収益5兆円のグローバルオペレータ。VodafoneのAnnual Reportの通り、多くの国でテレコム(モバイル+固定)インフラを提供することで事業拡大を行なっている。多角化経営ではなく、土管に専念しつつ、その規模を拡大することで競争力を維持しているように見える。2020/2021年のVodafoneの活動としては
- Huaweiとのコアネットワークの取引停止:トランプ政権による対中国網対策によるHuaweiバンの余波
- 5Gに向けたOpen RAN化:Open RAN labの開設やQualcommとのOpen RAN競業を行なっているようだ
- コスト効率化:vCloudを利用したテレコムインフラのコスト50%削減や2018年の新社長の方針の通りコストカットを推進しているようだ
- 5G採用ベンダ:不明
Telefonica
世界13ヵ国に2.6億人ユーザを抱え、営業収益5.7兆円のグローバルオペレータ。非常に強力なR&Dを保持しており、対外活動も非常に活発的でモバイル事業の技術リーダー的な位置付け。2020/2021年のTelefonicaの主な活動としては
Telefonicaは5Gに関して、5Gのエリア展開→5G Core&O-RANでのSAへの発展→Edge Computingという、5Gの王道的なステップでモバイル網の高度化を狙っているように見える。そのためのOpenな環境作りをこの2年でしっかり行なっているのだろう。元々TelefonicaはETSI-NFVの議長(Diego氏)を行なっていたり、OSM(Open Source MANO)を開発したりと、NFVに積極的であった。しかし、2016〜2018年はあまりTelefonicaの対外活動を聞かなかったので、もしかしたらNFVの商用開発&導入に専念し、今やっと一区切りついたのかもしれない。Orange
世界28ヵ国に2億人ユーザを抱え、営業収益5兆円近いグローバルオペレータ。ETSIの本拠地がフランスにあり、現ETSI-NFVの議長(Bruno氏)を行なっていたり、O-RANやGSMA、ONAP等でも積極的な活動を行なっている。2020/2021年のOrangeの活動状況はあまり情報が無いが、
- 5G開発中?:公式情報があまり無いのではっきりしないが、EricssonとNokiaと2023年に5G導入に向けて開発している?
Orangeの商用開発についてはあまり情報がない。対外活動は活発だが商用網の発表があまり無いことに違和感を覚える。
DT (Deutsche Telekom)
世界18ヵ国に2億人ユーザを抱え、営業収益8.6兆円近いグローバルオペレータ。海外留学していた友人の話を聞いても、自分自身出張した時の経験でも、他のヨーロッパの国と比較しても通信が安定しており、実直なイメージがある。2020/2021年の
- 5G SA開始:まだ地域限定のようだがかなり積極的に5Gの開発&商用導入が進んでいる模様。NSAの5Gも含むと人口カバー率は80%近くらしい。
- 5G採用ベンダ:Ericsson 5G RAN & Local 5G(BMW)、Nokia SR NW機器、Samsung 5GC & RAN (trial)
- O-RAN Town: 2023年へのO-RANベースの4G/5G RANに向けて、Dell, Nokia, NEC, Fujitsu, Mavenirと6万人規模の街でO-RANのフィールド試験を開始。
TIM(Telecom Italia)
ユーザ数5000万人、営業収益2兆円の中規模モバイル企業。他のOpen RAN MoUの主要メンバーと比較すると、グローバル展開をしていない分規模が少し小さい。
- vRAN商用導入:2018年の記事だが他オペレータに先駆けてRANの仮想化をEricssonと取り組んでいたらしい。
- IMSのUpgrade:2020年に固定とモバイルのIMSをEricsson IMSにUpgradeした(している)らしい。
- O-RAN導入に向けたOpen RAN MoU:DTやTelconifcaと比較すると商用に向けた活動に見える
- Vodafoneとのsharing network:4Gと5Gのイタリアエリアのネットワークを共有する取り組みらしい。
- 5G 採用ベンダ:Huawei (Cancelの交渉中?)、Nokia RAN、Ericsson 5GC & RAN
その他関連資料
- 各国の2G/3G/4Gの停波予定時期がまとまっていた。4Gの音声はCSFBかVoLTEしかなく、ローミングなどを踏まえるとCSFBが音声ではまだまだ多いことを考えると、各国ともに3G(2Gも?)を停波するまでには、5Gを普及させる必要があるのだろう。
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