5Gとコンテナはどんな関係があるの?
通信業界でも、最近はVMからコンテナに話題が移っているようだ。昨年あたりから楽天、Verizon、VMware、Samsungと様々な企業が5Gとコンテナについて発表を始めている。何故今通信業界でコンテナが騒がれているのだろうか?5Gとどんな関係があるのだろうか?
5Gの3GPP仕様にコンテナを想起させる仕様が多々ある
5Gのコアネットワークの基本標準仕様であるTS23.501において、REST、Service Communication Proxy(SCP)、Statelessなどコンテナを利用することを明らかに想定した仕様が多々ある。これらが“5Gはコンテナベース“と通信業界で騒がれている理由の一つかもしれない。
SCPとコンテナの関係
TS23.501のAnnex GにSCPの実装例の記載がある。こちらにはService MeshやService Agent、Ingress/Egress Proxyと、明らかにIstioを想定していると思われる仕様がある。TS23.501では、SCPはIndirect Communicationとしてオプション扱い(必ずしも必須の仕様ではない)が、ここまで詳細に記載があると、実際の開発においてベンダはIstioを使いたくなるだろう。
また、Istioを使う場合、Sidecarとして同一PodにIstioのAgentをデプロイする必要があるが、Sidecarをどのように提供するかが不明瞭な現在では、ベンダ戦略の一つ(コンテナとコンテナ基盤を同一ベンダで提供する)としてIstioを使うのかもしれない。5Gをどのようにデプロイすることがデファクトになっていくかは引き続き注視が必要だろう。
Statelessとコンテナの関係
通信系装置は、端末の位置や契約条件に基づくサービス利用条件、接続先トポロジーを覚えておく必要があるためどうしてもStatefulな作りになってしまうため、コンテナでの実装が難しかった。しかし、TS23.501の5.21章を見ると、仮想化に伴ってStalessを志向しており、UDRとUDSFにストレージ機能を置くことで、他の機能部はStatelessとなっている。こちらもコンテナを想定しているようであり、コンテナの実装が容易となるような仕様になっている。
とはいえ、実際の商用の運用を考えると、UDRやUDSFとして別ベンダが提供しているDataBaseを利用したり、商用トラヒックが集中アクセスしても耐えられるような実装は難易度が高いと思うので、実現方法には引き続き注視したい。
何故今通信業界でコンテナか?
TCAが発行している主要国の通信市場規模(2020年版)や総務省の電気通信事業の市場規模(平成30年版)が興味深いと思うが、通信事業はこの30年ほどで各国で飛躍的に大きくなったが、クラウド市場は比較的少数の企業によって通信事業以上のスピードで市場規模が大きくなってきた。これらの動向や通信系装置の仕様の変遷を見ると、通信業界は2010年頃からクラウド系の新しい技術を取り込むことで、競争力を維持しようとしているように見える。NFVでOpenStackをベースに仮想技術を取り込もうとしたが、こちらのOpenStackの参加者数を見るとわかる通りKubernetsの登場でOpenStackからKubernetsへクラウド系のトレンドが変わってきているので、通信業界もコンテナ技術を取り込もうとしているようだ。
NFVでもコンテナ関連のIFがSOL018としてStage3まで進捗し、O-RANでもコンテナに言及しているので、今後コンテナ関連の仕様は通信業界に間違いなく取り込まれる。一方で、通信系装置にはStatefulな装置や、4Gや他社網と接続する必要もあるので、コンテナと相性の悪い機能も多々ある。今後これらをどのように取り扱っていくのか、標準仕様の更なる進捗を期待したい。
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