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5月, 2021の投稿を表示しています

日本品質とは?

 グローバルでお仕事をしていると、よくキーワードとして“日本品質“という言葉をよく聞く。日本人が想像する日本品質と、海外の人がイメージする日本品質は本当に同じことを指しているのだろうか。そもそも日本品質とは形のあるものなのか? 日本品質のイメージ 日本人が日本品質というと、故障や問題が起きにくい、とか、災害があってもサービスが止まりにくいとかのイメージがあるだろう。一方で海外の人に日本品質というとどういうイメージなのだろうか? ヨーロッパ系の人のイメージ ヨーロッパと言ってもドイツやイタリア、フランスと様々な国や文化の人がおり、同国内でも開発者と運用者、消費者、経営者でイメージは違うようだが、総じて“よく分からないところにこだわりある“というイメージがあるように感じる。 消費者の持つ日本品質のイメージは比較的ポジティブだと思うが、一方で、日本品質だからと言って特別視しているイメージはない。日本車などは壊れにくいというイメージはあるようだが、製造国や原産地というよりブランド単位で判断している気がする。例えばチョコと言ってもベルギー産というより、GodivaやPierre Marcoliniというブランド単位で用途や嗜好によって選んでいるように感じる。私がお付き合いしている人は、車のトヨタ、ホンダ、マツダやゲームのNitendoは高品質というイメージを持っていた。日本の品質を特別視しているものは寿司と蕎麦のようだ。これらは日本ではないとなかなか美味しい物を食べられないと言っていた。 一方で、開発者等の目から見る日本品質は必ずしもポジティブではないように感じる。一言で言うと、日本人は「木を見て森を見ず」というイメージを持たれているように感じる。これにはいくつか理由があると思うが そもそも日本人は 全体像の説明が苦手 (ビジネスである以上は)費用対効果のあることに注力して品質向上&機能追加(多くの開発者) vs 利用者目線で少しでも不便なものがあればそれを全て直そうとする(日本) 上流工程であるUsecaseやRequirementから設計やテストを実施 vs 過去の経験の積み上げの独自の観点で設計の追加やテストの追加を行う(日本) というあたりが原因かもしれない。その結果、全員ではないと思うが「日本人は生産性や新機能を考えず細かいことばかり目がいく」というイメージ...

海外モバイルオペレータの動向〜ビッグオペレータ編

世界には800以上のモバイルオペレータがいると言われている。Wikipediaに各オペレータの 売上 と ユーザ数 のサマリと様々な報道発表を見ながら少しオペレータの動向について記載してみたい。 China Mobile ユーザ数が10億人、 営業収益13兆円 の世界トップのモバイル企業。China Mobileは Huawei がメインパートナーベンダであり、R&Dを持っている数少ない高い技術を持っているオペレータ。技術もお金も持っているためモバイル市場への影響力は非常に大きい。2020/2021年のChina Mobileの活動としては NFV Evolutionのプレゼン : NFVを導入し、運用するための人的リソース確保中 SDXの5Gネットワークの記事 :約1億人/21万局とのことなので、5Gの導入状況は大体10%程度というところ 5G 採用ベンダ:Ericsson  5G RAN & 5G CORE + NFVI 、 ZTE  SR NW機器 Disaster Recovery :中国も地震や台風などの自然災害が多いので、災害対策には力を入れているようだ China Mobileは今後5Gの全国展開拡大をしつつ、それに合わせてNFVの導入やオペレーションの自動化によって運用改善も狙っているのかもしれない。運用改善の狙いはOPEXの改善と、災害対策を狙っているのかもしれない。その実現のために、China MobileはETSI-NFV、 ETSI-ENI とOpen Sourceを活用したecosystemを作ろうとしていると思うが、中国は GFW によって他国と比較すると モバイルアプリは独自のEcosystem になっているようだ。現状まだecosystemの全体像は見えない。China Mobileの今後の発表によっては、China Mobileの世界観が分かるかもしれない。 AT&T ユーザ数1.7億人、営業収益17兆円のChina Mobileに並ぶ超巨大モバイル企業。ETSI-NFV、O-RAN、OPNFV、ONAPなどモバイルのエコシステムを大きく変化させるような団体を自ら立ち上げるパワーのあるオペレータ。2020/2021年のAT&Tの活動としては 5Gの公式発表 :既に多くの州で5Gサービス開始。 Am...

結局モバイルNWのお仕事って何?

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NFVやO-RANで議論していると、モバイルAPLを開発している人と、クラウドを開発している人の間で、根本的な考え方や前提の違いを感じる。モバイルNWも多数の機能を保持しているが、今回もモバイルNWが何をしているかをざっくり説明してみたい。 モバイルNWのお仕事 モバイルNWの一番の特徴は“端末が移動すること“だろう。そのため、端末の移動に伴って物理的な通信路が変化する可能性がある。特に道路や電車沿い等は通信先の基地局が頻繁に変化することが想定される。 TS 23.501 System architecture for the 5G System  を読むと多数の機能が羅列してあるが、一言で言うと“モバイルNWとは端末が移動したとしてもお客様の通信路を維持し続ける専用トンネルを作る装置群“と言えるだろう。 お客様の通信: 端末が移動したとしても、インターネットや通話等の通信を維持できるように“物理NW装置に依存しない専用トンネル“(=bearer)で通信 NW層: 端末〜無線〜基地局〜交換機からなる物理NW モバイル網NW: 端末の移動に合わせてそのNW層の通信路を隠蔽しながらお客様の専用トンネルを作成/更新する機能群 モバイルNWはNW層の上にお客様の専用トンネルを作るため、複数レイヤで複数の装置向けに別々のプロトコルをカプセル化して利用している。クラウドの方々はNW層の通信しか視点がないため、クラウドの機能でNWを動的に作成・制御することをイメージしているので、この点に根本的な考えの違いがあると感じる。 こちらの高速・大容量・低遅延を実現するLTEの無線方式概要 を参考にすると、このように多数のプロトコルが同一のパケット状に積み上げられていることが分かる。 無線部分の進化 もう一つモバイルNWを理解する上で理解が必要なことが無線区間の進化だろう。 5G無線アクセス技術 と W-CDMAシステムと共用可能なLTEシステム用無線基地局装置の開発 をみると、無線リソース制御部、符号処理部、アンテナ、無線部分で、それぞれ順番に進化をしているようだが、大きな機能分担そのものは変わっていない。 全体像を理解しながら各仕様や技術トレンドを把握することが、 世界観を提示しながらグローバルで交渉 する上で大切だろう。

日本人は本当に働き過ぎ?

海外の人と一緒に仕事をしていると、国よって個人によって労働時間の考え方が違うとしみじみ感じる。一方で、先入観と実態が違うこともある。例えば、日本人は働き過ぎというイメージを自他共に持っているが、実際には OECDのHours Workd (Timeの設定を変えることで主要国の1950年以降の労働時間を確認可能)や 男女別にみた生活時間 を見ても分かる通り、他国と比較してそこまで極端に多いわけではなく、むしろイタリアやアメリカより平均労働時間は短い。法律や企業文化、個人の価値観など様々な要因があるため一括りにはできないが、これまで一緒にお仕事をしてきた人を通して少しだけ労働時間の違いをお話ししたい。 アメリカ アメリカは非常に広く、州によっても法律が異なるため地域によって労働時間の考え方は全く異なるようだ。私がお仕事でお付き合いした人は西海岸の方が多いが、“成果重視“であり、そのため“時間がかかる細かい作業はしない“という印象がある。役職についたり、大きなPJを提案推進したりするが、作業時間がかかる細い分析やドキュメント作りはあまりしない。標準化の場でも、仕様を決めていく上での進め方や方向性の話に関する提案は持ってくるが、実際のドキュメントの中身は細かくなる&事前調査に時間がかかる提案ほど持って来ず、他社の提案に意見を述べる形で進めようとする、 そのような仕事の仕方と関連があるかどうかは分からないが、アメリカの労働法はどうやら労働者を保護するための労働法ではなく、会社間の公正な競争という側面が強いようだ。企業間の競争に影響を与えるような労働単価などは規定があるが、労働者の働かせ方に対する規制は少ないと聞いている。また、基本的には雇用契約は“合意“に基づくものであり、ホワイトカラー(管理職や専門職)とブルーカラー(労働者)を明確に区別しており、ホワイトカラーは職務(Job Description)に基づいて雇用条件を合意しているらしい。職務に基づく雇用条件は基本的に年棒制らしいので、なるべく短時間で大きな成果をあげた方が企業も労働者もメリットが大きいので、企業も労働者も生産性を強く意識しているのかもしれない。 余談: アメリカでは合意(agreement)と契約(contract)は異なるらしく、contractは法律の延長であり強制執行可能らしい。 アメリカは祝日は少...