投稿

7月, 2021の投稿を表示しています

VNF Lifecycle Management (LCM)とは?

イメージ
NFVの登場によりLifecycle Management (LCM)というキーワードが頻繁に登場するようになったが、NFVの用語定義( NFV003 )を見ても”set of functions required to manage the instantiation, maintenance and termination of a VNF or NS“としか書かれておらず、なかなか意味が分からない。NFVの仕様の基本であるLCMについて解説していきたい。 LCMとは?   標準化仕様について①「基本仕様の見分け方」 でも記載した通り、NFVの仕様の基本であり、仮想化されたNetwork Function(VNF)に対してInstantiation/Healing/Scaling/Termination等の制御を行うことである。元々は IT系のLCM  Service という考え方であり、それをNFVでテレコムやモバイル系装置にも同じ概念を適用したようだ。 NFVにおいては、これらの計画・設計 〜 導入・工事 〜 運用・更新 〜 廃止・撤去をそれぞれAPI化し、 モバイルの運用 でも利用可能なように機能を拡充している。 IT系と異なる点 としては 仮想リソース(VMやVirtual Storage)の設定や設計をインフラではなく、Network FunctionのApplication  Provider (VNF Provider)が決めている IT系では、Compute FlavourやGuest OSはインフラ提供者が決め、Cloudの運用効率最大化を指向することが多い NFVでは、性能向上のためにGuest OSの使い方がVNF毎に特殊だったり、そもそも独自OSを利用していたりするため、Guest OSや仮想リソースの設定・設計(Descriptor)はVNF Providerが用意する Cloudのネットワーク機能を利用せず、VNF自身がネットワークを制御する IT系では、CloudのDNSやOverlay Networkingの機能を利用しApplicationはNetworkを意識しない方向で設計や運用をすることが多い NFVでは、VNF自体がRouterのようなものなのでAddressingやTunnelingもVNF...

ITとモバイルの保守の違いとは?

「 標準化仕様について①基本仕様の見分け方 」や「 O-RANが盛り上がってきた 」のように近年はモバイルや固定も汎用サーバを利用し、VMやコンテナなどのIT系の技術を利用し始めている。一方で、「 モバイルネットワークの保守運用の基礎 」や「 仮想化と監視運用自動化 」のようにIT系の保守とは少し異なるようだ。IT系のデータセンタの保守はさくらのナレッジ「 データセンター運用管理のお仕事 」がリアルの保守作業なのでイメージしやすいと思う。 大規模集約型 vs 分散型 モバイルやテレコム系の通信ビルは NTTは7,000ビル 、 NTTドコモは80ビル 、 KDDIは120ビル であるが、 アマゾンは10ビル 、 Googleは3(?) とテレコム系とIT系の拠点(データセンタ)数に大きな差がある。「 知っておきたいO-RANの機能分割とテストの課題 」によると各機能部毎に分離可能な距離が限られているため、IT系のデータセンタと比較して、モバイルやテレコムの装置はどうしても分散型配備になってしまうのだろう。 コア〜CU: 200km CU〜DU: 80km DU〜RU(アンテナ): 10km また、先ほどのNTT/NTTドコモ/KDDIの通信ビルの写真を確認すると、IT系の何万台もサーバが入るようなデータセンタと比べて、かなり小規模な印象を受ける。これらを想像するに、モバイルやテレコム系のデータセンタは小規模分散型なのに対して、ITは大規模集約型であることが想像できる。 「 IT運用コストメトリックス調査 」や「 IDC Japanの国内保守データセンターコスト 」の通り、データセンタの保守は電力と人件費が支配項であり、1000台以上のサーバを1つのデータセンタに入れて空調や電力等の効率を上げるか?と、いかにSWとHWの保守を分離し1保守者あたりのHW保守対応可能サーバ数を向上させるかが肝となる。その観点を踏まえると、モバイル系の保守は、データセンタの規模が小さいことと、SWとHWが分離しきれていないことで、IT系の保守効率向上を十分に享受できていないのかもしれない。 保守業務の今後 IT系の企業は、CDNをはじめとしてEdge  Computingの方向に向かっている。一方で、モバイルはNFVやO-RANによるクラウド技術の導入やC-RAN、MECによって従...

モバイルネットワークの保守運用の基礎

イメージ
O-RANや Sliceの管理 によって、最近モバイルネットワークの保守運用が脚光を浴びるようになってきた。しかし、運用方法や保守系装置は“オペレータやベンダ毎に異なる領域“というイメージであり、なかなかまとまったドキュメントや資料が見つからない。 保守運用の基本 これまでネットワークの保守運用のデファクトや標準仕様と言えばTM Forumの eTOM 程度しか無かったと思う。eTOMや各種標準化機能やOpen Sourceを踏まえると、大きく以下のような考え方がありそうだ。 保守運用のプロセス strategy: 新サービス導入やユーザの利用状況を踏まえた設備計画 保守運用の観点から見るとfulfillmentのInput情報 fulfilment(fulfillment):設備計画に基づいたネットワーク装置(NF)や、それらを接続するネットワーク(NW)の設計・工事 assurance:運用しているNFやサービスの監視や復旧、更新作業 4Gまでの保守運用というと、assuranceを指すことが billing:利用状況に基づいた課金 保守運用の観点から見ると運用結果のOutput 保守運用レイヤ Business Management System (BMS): 顧客の契約情報を管理 一般的にBusiness Support System (BSS)を利用 Service Management System (SMS): 提供サービスの管理運用 Network Management System (NMS): (サービスを実現する)NFの接続性の管理運用 4GまでのOperation Support System (OSS)と言うとNMSのことを指すことが多かったようだ Element Management System (EMS): NF自体の管理運用 NFのFCAPSと言えば、EMSのことを指すことが多い 一般的にネットワークの保守運用というと、EMSまたはNMSのレイヤのfulfilment+assuranceを指すことが多いように感じる。しかしながら、システムによる実装と人手での運用という観点では、4GまではEMSのassuranceまでを実装し、残りは手作業ということも多かったようだ。規模が大きな企業では、NMSやSMSの一部を取り入れてOSSを導入し...

Sliceを管理するために必要な管理機能部

イメージ
 5Gは大容量・低遅延・多デバイスという性能的な特徴の他に、目玉機能としてNetwork Slicingがある。しかし、Network Slicingが何者か、どのように機能分担が変わるのかの全容は今ひとつはっきりしない。 総務省の『Network Slicingとは?』 や 3GPP TS28シリーズ(OAM系) 、 ETSI ZSM ISG (特にETSI GS ZSM 003)  を中心にNetwork Slicingとその管理機能を読み解いてみたい。 Network Slicingとは何か? 本質的には、 Software Defined Data Center のように、インフラを何らかの技術(仮想化やVLAN+QoS等のIsolation technology)によって複数のネットワークに分割することだと思う。そのUsecaseとしてあげられている事は SLAの違いによってネットワークを分離 大容量 or 低遅延 or 高信頼性などの違いが挙げられている 特定用途のためのLocal Area Network (Local 5G) 工事現場の機器の制御、Becon等の自動車や道路情報のネットワーク、工場内の機器の制御、電車等の制御があるようだ 日本政策投資銀行『5G/ローカル5Gレポート』 に世界の5GのUsecaseがまとめられている 複数オペレータによる インフラの共有 特に基地局やBackboneのNWが候補のようだ というのがあるようだ。問題は、 これらの実現のためにどんな技術をつかうか? であるが、それが現在のところはっきりしていない。典型的なアイディアとしては、仮想化技術+VPNの技術によって、モバイルのネットワークの装置(Network Function (NF))とそのネットワークを全て仮想的に独立したインスタンスとして用意するというアイディアがあるようだ。しかし、このアイディアの場合は、スライスの数だけ(仮想的とは言え)モバイルネットワーク装置(NF)を複数用意する必要があるため、リソースの分割損や、保守運用の複雑化、設備購入コストの増加などが想定され、短期的には利用しづらいかもしれない。 Network Slicingの管理機能部 詳細は ETSI GS ZSM 003 の5章&6章をご確認頂きたいが、E2E Serv...