ITとモバイルの保守の違いとは?

標準化仕様について①基本仕様の見分け方」や「O-RANが盛り上がってきた」のように近年はモバイルや固定も汎用サーバを利用し、VMやコンテナなどのIT系の技術を利用し始めている。一方で、「モバイルネットワークの保守運用の基礎」や「仮想化と監視運用自動化」のようにIT系の保守とは少し異なるようだ。IT系のデータセンタの保守はさくらのナレッジ「データセンター運用管理のお仕事」がリアルの保守作業なのでイメージしやすいと思う。

大規模集約型 vs 分散型

モバイルやテレコム系の通信ビルはNTTは7,000ビルNTTドコモは80ビルKDDIは120ビルであるが、アマゾンは10ビルGoogleは3(?)とテレコム系とIT系の拠点(データセンタ)数に大きな差がある。「知っておきたいO-RANの機能分割とテストの課題」によると各機能部毎に分離可能な距離が限られているため、IT系のデータセンタと比較して、モバイルやテレコムの装置はどうしても分散型配備になってしまうのだろう。

  • コア〜CU: 200km
  • CU〜DU: 80km
  • DU〜RU(アンテナ): 10km

また、先ほどのNTT/NTTドコモ/KDDIの通信ビルの写真を確認すると、IT系の何万台もサーバが入るようなデータセンタと比べて、かなり小規模な印象を受ける。これらを想像するに、モバイルやテレコム系のデータセンタは小規模分散型なのに対して、ITは大規模集約型であることが想像できる。

IT運用コストメトリックス調査」や「IDC Japanの国内保守データセンターコスト」の通り、データセンタの保守は電力と人件費が支配項であり、1000台以上のサーバを1つのデータセンタに入れて空調や電力等の効率を上げるか?と、いかにSWとHWの保守を分離し1保守者あたりのHW保守対応可能サーバ数を向上させるかが肝となる。その観点を踏まえると、モバイル系の保守は、データセンタの規模が小さいことと、SWとHWが分離しきれていないことで、IT系の保守効率向上を十分に享受できていないのかもしれない。

保守業務の今後

IT系の企業は、CDNをはじめとしてEdge  Computingの方向に向かっている。一方で、モバイルはNFVやO-RANによるクラウド技術の導入やC-RAN、MECによって従来より集約に向かっている。そのため、段々とIT系とモバイル系の保守業務は似てくるかもしれない。勿論、IT系とモバイル(特に基地局やU-Plane系装置)は対象のAPLが異なるし、SLA等の法制度も異なるため、SWの保守はしばらくは異なるままだろう。

特にモバイルで盛り上がっているCloud Native化や自動化の技術が普及すれば、SWとHWの保守は分離することができるようになりHWはIT系とほぼ同じような業務フローになるだろう。問題は、既存のモバイルオペレータの場合は従来のビルや設備を活用しようとする可能性があるので、どのタイミングで損益分界点を発見して新しいデータセンタ用のビル構築に踏み切れるかかもしれない。

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