NFV#36 (2021年12月)会合サマリとO-RAN WG6 November trainのサマリ
今回のNFV#36(12/1〜10)もコロナの影響でeMeeting (電話会議)となった。今回はNFV-Workshopのようなイベントは無かったようだが、いくつかの仕様検討は大きく進んだ。最新のNFV仕様の全体像はこちら(ETSI-NFVのOpen area)で、前回NFV会合の説明や現在のNFVのリリース機能の状況はNFV中間会合(10月)サマリを確認して頂きたい。
NFV#36のサマリ
NFV#35やNFV中間会合(10月)と比較した重要な活動結果としては、
- Release3のed361がFinalize Review (12月Finalize/1月Publish)となりFEAT03(NFVI Upgrade)がサポートされるようになる。
- Release4のNormative WIとしてPaaS (特にOAM系)、MDA(Machine Learning)、Intent mgmtが提案された。
- Release5のNew Work ItemのVNF Configuration、NFV for vRAN、Fault ModelのUsecaseが概ねで揃ってきた。
会合参加者の目線からすると、開発で注目されている技術や各標準化団体の境界案件のような重要な案件の進捗はeMeetingが続いたことでどんどん遅くなってきている。ロビー活動ができないことで、様々な他社案件に対して疑心暗鬼になったり警戒してしまったりして、協力し合うという空気感が薄くなってきているように感じる。また、もう一つ大きな問題として、ETSI-NFVの認知度向上やベンダを含めた製品化を牽引してきたような重要メンバーが高齢化し引退を始めている。これまでにNSDやVLのInformation Modelの設計を牽引したHPEのMarc氏、ETSI-NFVのアピールに貢献したCable LabのDon氏が引退し、そして今回ETSI-NFV NOCの重要メンバーでありZSMのChairも務めたKlaus氏が引退を表明した。今後年齢的にETSI-ISG ChiarのBruno氏、NOC ChairのDiego氏も引退話が出始めるかもしれない。
Release3:LCMの高度化
IFA&SOLの第3版(ed361)のCRが全て承認されFinal Reviewになった。- FEAT03 NFVI Upgradeが完成した。
- IFAによるとNFVI Upgradeの方式は大きく以下のような順序で行う。VIMがNFVI Upgradeのマスターとなり、EMがそのメンテナス情報を受け取って対処するという考え方である。
- 事前に各VRのメンテナンス時の通知条件をPolicyで登録しておく (Rel3のScope外)
- VIMの独自ソリューションでNFVIをUpgradeする (現NFVのScope外であり実装依存)
- NFVIをダウンさせる前に、1で登録したPolicy条件に基づいてVNFMにVR Change Notification(IFA006)でメンテナンス情報を通知する (Rel3にてサービス停止予定時間等のメンテナンス関連の付加情報が追加)。VNFMはVIMから受け取ったVR Change Notificationをベースに、EMにAlarmでメンテナンス情報を通知 (Rel3にて3と連動した付加情報が追加)
- EMはメンテナンス情報をベースにAPLレベルの制御や、VNF LCM制御、Policyの変更などを実施 (現FEAT03ではPolicyの変更は未定義)
- SOL014においてVirtual Resource (VR) Change Notificaiton (NFVIをMaintenanceするときにVIMからVR単位でMaintenanceの信号)とAlarm Notification (仮想リソースの障害情報)をサポートするように仕様を拡大した。参照実装としてはAodhを利用し、VR Change NotificationとAlarm NotificationのSubscriptionをそれぞれ行うことで、Notificationを識別することを想定しているようだ。
- SOL002において、Alarmが拡張され、Fault typeにNFVI_OAM_VIRTUALIZED_RESOURCE_STATE_CHANGEが追加され、メンテナンス関連の情報が追加された。Faultの中身はRel5 IFA045で仕様化予定。
- VIMに設定するPolicy Contentや、EMからのPolicy変更などはRel3の対象外。Rel4でPolicy Content (IFA042をベースとしたNormative仕様)で仕様化予定。
- Rel3 の最後の大きな仕様WIMのNorth Bound Interface (NBI)はIETF ACTNベースでSOL019としてWIが開始
- SOL017(WIMのNBIのプロトコル評価のレポート)はNECがRapporteurだったが、SOL019(WIM NBIのstage 3)はHuaweiとなった
- ExtCpを利用したIPアドレスの付与方法について、課題提起あり
- ExternallyManagedVirtualLinkの識別ができなかった仕様について、VNFDに識別子externally_managedを追加。
- IPアドレスの付与を誰が行うかについて不明瞭だったため、どこから付与されるかのip_address_assignment_subtypeをVNFDに追加。
- MacAddressも同じような付与元の明確化を拡張する予定だったが、IPアドレスとは特徴が異なるため3.7.1へ延期。
- SOL016はSOL014の取り込みとSnapshotのシーケンス拡張をしたが、完成に至らず3.7.1 (2022年春)に延期となった。
Release 4:コンテナ対応
NFV#36はRelease3のFinalizeを優先したため、Release4の進捗は限定的だった。- IFA036 CCM IFについてはEditor‘s Note(仕様が不完全な残課題)を解消したが、SOL018はあまり進捗しなかった。
- SOL001はコンテナを収容するための拡張が概ね完了し、現在は既存IF (SOL002/003/005)の拡張中である。最新のSOL003の提案を見る限り、
- PodはResourceHandleにマッピングされ、CISMの管理情報がマスターになる方向。
- DeploymentはMcioInfoにマッピングされ、VNFMが管理情報のマスターになる方向。
- IFA041 Autonomous mgmtに従ったMDA(Management Data Analytics)の新規IFをHuaweiが提案。
- IFA041 Intent mgmtに従った新規IFをCMCCが提案。詳細は「仮想化と監視運用自動化」を参照。
- IFA042 Policy Modelに従った新規Policy contentをCMCCが提案。ONAP APEXとPolicy FrameworkをECA(Event Condition Action)ベースでテレコム向けに再定義。
- かなり細かいレベルでErro-handlingも記述することを要求しているので、ETSI-NFVで拡張仕様を決めることになるのだろう。
- EVE019 (Generic OAM) + IFA029 (Common Function) = PaaSとして、NFV-MANOでPaaS基盤を提供するWIをドコモが提案。
- Enh01.01としてCertificate Mgmtが追加されることになり、Operator Certificate Enrollment Function (OCEF ≒ CA局から証明書を配信するPKI相当)のStage2に向けたDiscussionあり。
- ( mTLSやOAuthのClient認証で使う)各APIのEnd Pointに利用するCertificateの配布は、各機能部(VNF/NFV-MANO)が既存プロトコルを最大限に利用して自ら証明書を入手する
- 一方で、OCMFが提供したCertificateが、各機能部にとって信用できる証明書であることを識別するためにCertificate Chain(該当Certificateを発行した上位認証局のCertificate)を配る必要がある。現状はCertificate Chainを的確に配布するロジックや標準仕様はないため、実質同一ベンダのOCMF(CAやPKI)内でしかCertificate Chinを配ることは難しかった。
Release5: NFV適応ドメイン拡張
Release5はStudyのUsecaseが進んできた。元々「NFV#34の会合サマリ」でも記載した通り、Release5はAPLレイヤの制御支援による自動化と、NFVで利用可能なドメインの拡張が主な方向性であり、少しずつ課題が見えてきたようだ。
- IFA043 Enhanced container network: IFA038の後継でテレコムのNW条件を考慮したContainer NWの拡張。本会合では進展なし。
- IFA044 Flexible deployment: ”Deployment Flavour”によるStaticなScaleの仕様からコンテナの特徴を活かしたよりDynamicなScaleを行う方法。目次(ToC)がかなり固まってきた。
- IFA045 Fault Model: Alarmの中身の規定。Computeをベースに、どんな障害を誰がどのように変換するかの基本Usecaseが少しまとまってきた。
- IFA046 NFV for RAN: O-RAN仕様のGAP分析として、O-RAN WG1やWG6のドキュメントのうち、UsecaseレベルでNFV仕様とのGAP分析の全体像が記述。
- EVE021 Green NFV: 省電力に向けた高度なPolicy制御やSmall Setの機能定義。本会合ではあまり進展なし。
- EVE022 VNF Configuration: VNFに関するConfigurationの設定ルート。こちらも既存のConfigurationルートは概ねUsecaseが揃ってきた。
O-RAN WG6 November train
9月のO-RAN会合がEntity Listの影響でキャンセルになってから少し動きが見えにくくなっていたが、現在はO-RANの規定がCloseな規約からOpenな規約に変えたことでEntity Listの影響を受けない規定になり、主要企業含めて無事活動を再開している。今回はWG6関連のNovember Trainの状況について簡単にまとめたい
- ドキュメント体系の見直し: ドキュメント間の関係が不透明だったO-RAN WG6のドキュメントについて、3 Stage法によって各ドキュメントの仕様を継承するように改善中
- General Aspect and Principle (GA & P): Stage 1相当として基本概念や機能の説明を行う。
- Orchestration Usecase: Stage1〜2として、実現したいことからインフォメーションフローを記載し、各機能やIFの要件を抽出する。
- Interface: Stage3として、Information ModelやData Model、Protocolを定義する。
- O2 GA&P: 特に新しい定義は無いが、各機能部の定義がそれぞれUsecaseやInterfaceに合わせて改良された。
- O-Cloud: O-Cloud Node(Compute/Network/Storage相当) 、Workload(VMとPod相当)、Resource Pool(NFVI-Pop/Zone Group/Zone相当)などの定義が見直され、DMS(Workloadの管理)とIMS(O-Cloud NodeとResource Poolの管理)の役割がもう少し明確になった。
- Provisioning: NFVのVNF LCM (O2dms)、CIS ClusterのLCM(O2ims)
- Fault Mgmt: Alarm (SMOに通知しActionが必要な障害)とFault(全ての障害全般)の定義。
- Performance Mgmt: Metrics(測定項目)やMeasurement(測定値)の定義。
- Orchestration Usecase: PMのUsecaseが追加された。
- O-Cloud LCM: O-Cloudの構築〜Upgrade〜撤去
- NF Deployment: VNF LCM相当(ただしHealingは現状なし)
- xApp LCM: RIC platform上のAPLのLCM
- Recovery: O-Cloud NodeやNF DeploymentのReset
- Fault Mgmt (IMS): O-Cloud NodeのAlarmに対するSubscription〜Notify〜Query〜Syncrhonization
- Performance Mgmt (IMS): O-Cloud NodeのPerfurmance取得〜通知/Queryなど
- O2 IMS interface:: FMを‘入れようとしたがMarchに延期
- O-Cloudベンダが用意するAlarm DictionaryをベースにAlarmを定義しようとし、Alarmの意味をSMOが分からなくて意味があるの化?という点から371に延期。
- AAL GA&P: HW Accelerator (FPGAやGPU等のデバイス)、HW Accelerator Manager (Operator frameworkなど)、AAL Profile (HW Accelerator上で動作するプログラムであり、GPUならCUDA)、AAL (AAL ProfileとNF Deployment間のIF)などの定義と、無線で必要なアクセラレータの種類を定義
- AAL FEC: FECのAAL ProfileとHW Accelerator デバイスの検出のAPI定義
- AAL High-Phy: High-PhyのAAL Profile
次回はO-RAN仕様全体を通して、IFA046での分析ポイントをまとめてみたい。
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