NFV IFA&SOL (2021年10月)中間会合サマリとETSI-NFV仕様の各Release機能

 今回はIFA&SOLの中間会合(10/25〜11/4)もコロナの影響でeMeeting (電話会議)となった。今回は標準仕様としてはあまり目立った進展はなかったが、Release4とRelease5のゴールが少しずつ見えてきた。最新のNFV仕様の全体像はこちら(ETSI-NFVのOpen area)で、前回NFV会合の説明はNFV#35の会合サマリを確認して頂きたい。

ETSI-NFV仕様の各Release機能

ETSI-NFVはテレコムAPLをクラウド上に載せる技術と仕様であり、各Releaseによって制御範囲や制御内容の拡張が行われている。

  • 非仮想化: ETSI-NFV仕様導入前は、テレコム装置であるNF (Network Function)と、それを制御するEM (Element Manager)、そしてそれら複数のEMを運用する支援するOSS (Operating Support System)によって構成されている
  • Release2: VNF LCMとは?の通りVNFやNSの基本ライフサイクルがサポートされている
    • 仮想化されたNF(VNF)と VNFが動作するクラウド環境NFVI (NFV Infrastructure)+VIM (Virtual Infrastructure Manager ≒ OpenStack/vCenter)が導入された
    • 複数のVIMとVNFを統合管理するNFVO (NFV Orchestrator)と、NFを仮想化するにあたってNFVOやVIMだけで不足するVNFM(VNF Manager)がNFV-MANOとして新規追加された
    • NFV-MANO動作させるNS Package(NSD) (SOL007)とVNF Package(VNFD, VM image, Artifact) (SOL004) 、そしてTOSCA-baseのNSD/VNFD (SOL001)とYang-model baseのNSD/VNFD (SOL006)が定義された
    • 各機能部を接続するRESTベースのAPI (SOL005, SOL002, SOL003)とVIMを制御するVirtual Resource Descriptor (≒HOT)が定義された
  • Release3: VNF/NS LCMの高度化のためにNWとVNFの統合管理がサポートされた
    • ETSI-NFVではFeatureという単位で管理されFeature Trackingで仕様規定状況が分かるようになった
    • VNF Software modification(FEAT02)により、VNF LCM API(SOL002)とVNFD(SOL001)が拡張され、動作中のVNFを更新できるようなChange Current VNF Package Operationが追加された。
    • Multi-Site Multi Connectivity (FEAT10)により、WAN (Wide Area Network)とそれを制御するWIM (WAN infrastructure Manaegr)が導入された。現在IETF  ACTN (RFC8453)ベースのAPI (SOL019)が定義中である (2022年中旬完成予定)
    • Network Slicing (FEAT05)やService Availability Level (FEAT16)により、NS毎にQoS制御がLCMの優先度が制御できるようにNS LCM API(SOL005)が拡張された。
    • NFV-MANO Mgmt (FEAT11)やVNF Snapshotting (FEAT15)により、NFV-MANO自体のOAM用API (SOL009)や、VNF LCM API(SOL002/003)とVNFD(SOL001)の拡張によるVNFのSnapshot取得機能が追加された。
    • NSのMulti-domain (FEAT08)により、NFVOを論理分割し、それらのNFVOを接続するSOL005ベースのSOL011が定義された。
    • Policy mgmt (FEAT07)もRelease3で追加されているが、肝心のPolicy Content(IFA042)がRelease4以降のため、現時点で利用することは難しいだろう。
    • MEC対応 (FEAT012)もRelease3で追加され、SOL004のVNF PackageにMEC関連の資材投入のための拡張とSOL002にCoordinate LCM operationの追加が行われた。ETSI Plugtest 2021においてNFVとMECの接続が行われるので、仕様とプロダクトの両方の観点でどの程度NFVとMECが接続可能か近日中に分かるだろう。
  • Release4: VNF自体がクラウド向けに進化(クラウドネイティブ化)を想定し、NFV-MANOのクラウドネイティブ支援機能が追加されている
    • Release3までと比較するとAgileを意識しているせいか、半年単位(Drop)で新機能対応のAPIをリリースする方式になっている。初版はコンテナ対応であり、その順次Release4の拡張機能がリリースされる見込みである。
    • FEAT17により、Kubernetesベースのコンテナ環境のサポートのために、コンテナ実行環境であるCIS (Container Infrastructure Service)とCISの管理機能であるCISM (CIS Manager)、コンテナのイメージレポジトリであるCIR (Container Imager Registry) が導入された。現在 Helmchart/Kubernetes API/Docker Registry APIベースのAPI (SOL018)とMCIOP (Managed Container Infrastructure Object Package)の管理方法(MCIOP自体はETSI-NFVのScope外)を定義中である(2022年初旬完成予定)
    • VNFが動的に変更することに合わせ、VNFのライセンスの動的管理(FEAT13/IFA034)、VNFのリソースをインテントベースで管理できるようなAIの導入(FEAT20/IFA041)、PaaS(FEAT24/EVE019)、VNFへの証明書を動的に配布できるOCMF (Operator Certificate Management Function)を導入予定である。
  • Release5: RANとCOREの統合管理
    • 現在RAN対応のためのNFV for vRAN(FEAT27/IFA046)やGreen NFV(FEAT029)のStudyが始まっている。
    • また、従来のコンテナやネットワーク、FMなどの拡張も実施予定である

中間会合のサマリ

NFV#35と比較すると今回大きな進展はなかったようだ。
  • Release3はed361(11月完成予定)に向けBug Fixの提案が何件か議論中(解決には至らず)。
  • Release4はed431(2月完成予定)に向け、SOL018を中心にVNFDとのMappingやSOL018のInput/Output parameterが少し進捗したようだ。
  • Release5は初版のStudyがスタートし、まずはScopeや最初のUsecaseの検討が始まった。

Release3:LCMの高度化

IFA&SOLの第3版(ed361)にむけFEAT03の完了とBug Fixを優先して議論されたが、完成には至らなかった。
  • Grant関連の仕様における不明瞭な記述の修正提案
    • Affitinity/Anti-Affinity ruleの責任範囲の明確化。
    • SR-IOVのネットワーク設定情報の受け渡し方法の明確化。
    • NsChangeNotificationの通知Triggerにおいて、VNF LCMだけのオペレーションを含むかの議論
  • FEAT03 NFVI Modificationの実現のために、更新対象のNFVI上で動作されているVNFを同制御するかについて議論
    • NFV-MANOトリガーでCoordinate LCM operationでVMを安全に停止しNFV-MANOで該当VMを移動する vs NFV-MANOはMaintenanceの通知のみ送信しEMで対処する、で議論中
    • NFV-MANOはMaintenance通知のみの方向で検討中。

Release 4:コンテナ対応

Helmchartの記述や、NFV-MANOから渡すrun-time情報(NW情報や現在のリソース状況等)としてのValue.yamlの記述レベルについて議論中
  • SOL001は概ね完了したため、残りはSOL018。
    • Input Parameterについて概ね最低限必要なrun-time情報が揃ってきたので、これからはOutput Parameterが議論の中心。
  • Slicingの実現に向けて、ZSMと連携して“Feasibility Check“という新しいフェーズの導入を議論中。
    • 現在のSOL003の設計ポリシーで実現しようとするとRESTっぽくないので再検討
  • SEC005のOCEFが改名され、Operator Certificate Management Function (OCMF)として仕様規定開始。
    • Release4からはmTLSベースでの認証になるためroot証明書が必要。
    • SOL009のIFを利用してroot証明書を配布する方向で検討中

Release5: NFV適応ドメイン拡張

各WIについて最初のUsecaseの提案開始。
  • IFA043 Enhanced container network: Workplanのみ共有。
  • IFA044 Flexible deployment:進展なし。
  • IFA045 Fault Model: HWの故障が最終的にどのようにVNFMやNFVOに届くのかのUsease提案。
  • IFA046 NFV for RAN: 進展なし。
中間会合とは直接関係ないが
  • EVE021 Green NFV:電力問題の背景を記載。
  • EVE022 VNF Configuration: 現仕様におけるConfigurationのルートについて分析。


ETSI-NFVは参加者がアジア、ヨーロッパ、アメリカ・・・と世界中から参加しているため、どうしてもオンラインだと議論可能な時間が限られてしまう。現在は日本時間の22〜24時がゴールデンタイムと言われており、この時間のみ世界中の参加者が(ギリギリ)会議に参加し議論できる。そのため、どうしても活動時間が減り、難しい案件ほど仕様策定の進捗が遅れてしまっているようだ。
11月からはヨーロッパのサマータイムが終わってしまったため、日本は23〜25時がゴールデンタイムになってしまった。筆者も深夜の会議参加が辛く感じるようになってきたので、日本を含むアジアの方々もかなり大変だと思う。

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