MECとは?vRANやNFVとの関係は?
O-RAN/vRAN (virtual Radio Access Network)と並んで、最近注目を集めている技術にMEC (Multi-access Edge Computing)がある。AWSやGoogleなどのHyperscalerと呼ばれる巨大なパブリッククラウドビジネスがある中で、小規模分散型のMECが騒がれている理由について見てみたい。
MECが想定するビジネス
iGillottResearchの『小売業界におけるMECのビジネスユースケース』や、NECの『ユースケースによるMEC導入効果とメリット』に想定されるビジネスが記載され始めているが、これらのユースケースによれば各企業のシステムを自社(オンプレミス)〜ネットワーク(MEC)〜クラウドのどこに置くかによって“企業のコスト構造の変更によるコスト削減“に見える。
一般的にビジネス性と言えば、「(収入ーコスト)×ビジネス継続期間」となるので、①新規収入(収入UP)、②コスト削減、③SLA/品質/安全性向上(ビジネス継続)のいずれかとなる。MECにおいては各企業のシステムを構築する環境(クラウド)の提供形態となるので、ITとモバイルの保守の違いとは?での説明の通り本来物理装置を集約することでコストを極限まで下げることで成り立つビジネスのはずである。しかし、MECは分散することで②のコスト削減や③の品質や安全性の向上を狙っているので、分散クラウドによる維持コスト増加とのバランスにおいてビジネス性のあるユースケースがなかなか出てきていない。総務省の『ネットワーク設備委員会』においても、この分散クラウドとパブリッククラウドの効果とコストのトレードオフの関係は議論されているようだ。
交換機に近い場所では、モバイルオペレータ観点では設備の効率化は可能だが必要となるリソースのパブリッククラウドとの差が小さくなるため、大きな費用構造の差は無いだろう。パブリッククラウドの場合ネットワーク帯域の使用料が比較的高額なケースが多いため、そのような高額なリソースの種類によってはMECが競合相手になる可能性がある。一方で、中継局や基地局のような箇所にMECを置くことが出来れば、ネットワークリソースなどを省略し、費用構造を変えることができるだろう。ただし、MECを基地局サイドに近付けるほどアーキテクチャ上の課題や、モバイルオペレータの設備や保全費用の増加、MECシステム間の連携など様々な課題が発生する。これらのコスト構造の変化がビジネス性があるかどうかがポイントとなるであろう。
MECのアーキテクチャと課題
JANOGの『MECについて』やOno氏の『コンピューティングがネットワークに溶け込む未来』によって、RAN (Radio Access Network)やCN (Core Network)における呼処理のアーキテクチャや課題が説明されている。本来モバイル網は、利用する端末(UE)が移動しても通信が継続できるように専用線を提供することがミッションなので、専用線の途中で接続先を切り替える(ブレイクアウト)ためには様々な技術的課題があるようだ。
一方で、オペレータのモバイル網で企業のシステム(お客様アプリケーション)を動作させるためのインフラ目線での課題もある。分散クラウドにおける維持コスト増加を緩和させるためには、一番典型的な方法はモバイル網の中に少しだけ余剰リソースを用意し、そこでMECを提供することであろう。これによって、モバイル網の維持とMECの維持を共通化できるため、分散クラウドの維持コストを軽減できるかもしれない。ETSI NFVでも同様の考えは議論されているようで、NFVNOC(21)000016、O-RANの仕様、ETSI GS MEC 003を踏まえるとこのような構成になるのかもしれない。
特にMECとNFVの関係については、ETSI GS MEC 003 6.2章や、ETSI NFV&MEC IOP Plugtest report 8.3.5章で、NFV基盤上でMEC PlatformやMEC Applicationを動作させるアーキテクチャが仕様化・実装され始めている。
このようにNFVのPlatform上にMEC PlatformとMEC ApplicationがVNFとして動作し、NFVOとはMEAO (MEC Application Orchestrator)が接続し、MEAOがCFS (Customer Facing Service)PortalやOSSと連携するアーキテクチャとなっている。
このMEC〜NFVの連携にあたっては
- MEAO〜NFVO(SOL005ベース): MEC AppやMEC PlatformのOnboardingやLCM
- MEC Platform〜VNFM(SOL002ベース): VNF LCM Notification
- MEC App〜VNFM(SOL002ベース): VNF Configuration
- モバイルオペレータが試験していない3rd partyのAPLを、モバイル網内のPlatform上で動作させて良いか?
- 現在のNFV仕様ではマルチテナント対応が済んでいない中で、どのような仕様でMECと呼処理のVNFのテナントを分離するか?
- (法人システムはコンテナベースの実装が多い中で)どのような技術でVMベースのVNFとコンテナベースのMECを混在させるか?
- NFVIやMANOを更新やメンテナンスする場合に法人システムにどのように影響を与えずに実施するか?
- (MECとして複数の基地局にシステムが分散した場合)MEC間の同期や連携はどうするか?その間のNW等は誰の責任でどう構築するか?
ETSI NFV&MEC IOPにおいては、MANOからのLCMやStart/Stop、MEC AppのActivate/Deactivateなどの試験が行われたようだ。Instantiate VNFなどは動作しているようだが、Activate/Deactivateなど、試験未実施項目がまだまだ多数あるので、MEC Platformのプロダクトが出てくると、今後NFVとの連携も成熟していくかもしれない。
まだまだMECはビジネス性が不透明であるため、基地局などの分散している環境に法人システムを構築する場合の技術的課題の大きさを考えると、MECが本格化するためには、この辺のトレンドの変化が必要かもしれない。
- (低遅延以外の)コスト構造の変化を最大限享受できるキラーコンテンツ
- 消費リソースの最適化踏まえた価格設定
- 分散システムを簡易に構築できるPlatformの技術的進化
- 基地局サイドのメンテナンス性の向上と自動化




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