NFV#39(2022年9月)会合サマリ

 今回のNFV#39では、旧議長陣が引退し選挙が行われたり、次期NFVのコンセプトについてWorkshopがあったりと、ETSI NFVが大きく飛躍する期待を受けた。

NFV#39のサマリ

NFVの各Releaseの概要はNFV IFA&SOL(2021年10月)会合サマリとETSI NFV仕様の各リリース機能、詳細はReleaseDocumentを参照して頂きたいが、前回NFV#38からの更新は

  • Release2 (VNF LCMの基本機能): v2.8.1を最終バージョンとして終了(変化なし)
  • Release3 (自動化やNWの制御): v3.7.1を最終バージョンとして最終メンテナンス中(WIM  IFを除く)
    • SOL APIで参照しているREST系のRFCについて、RFC 9110 “HTTP Semantics”とRFC 8446 “TLS Version 1.3”によりいくつかの仕様が変更になった
      • RFC 7231、RFC 7232、RFC 7233、RFC 7235が廃止(Obsoleted)されたことで、“payload body” -> “message content”、”422 Unprocessable Entity” -> “422 Unprocessable Content”と名称が変わった
      • HTTP conditional requestsが導入され、GETやPatchでの”E-tag”や”Last-Modified”によるキャッシュの仕様が明確になった(既存仕様でも考慮はされていたが不透明な仕様だった)
      • RFC 8446ではRFC 5246 “TLS Version 1.2”は廃止(Obsolted)になっているが、SOL  API Rel3はTLS 1.2を継続利用することになった
    • SOL005 Os-Ma-NfvoにおけるImageのUpload/Download時にBASIC認証も利用できたが、OAuth2.0のみとなった
    • SOL002 Ve-VnfmにおけるVNF/VNFC Configuration Dataにおいて、DHCP ServerのIP Addressは不要(DHCP DISCOVER/DHCP REQUESTはBroadcast)のため、dhcpServer attributeの削除
    • SOL001 VNFDで指定可能な仮想リソースが拡張された
      • Virtual MemoryにメモリサイズやNUMAに追加してHuge Pagesも指定できるようになった
      • VipCpについてもScaleが対応し、ScalingAspectsDeltaやInstantiaionLevelにVNFC数に追加して、Vipも指定できるようになった
    • SOL001 VNFDにおいてtosca.datatype.nfv.SwImage(Rel2で利用)が廃止され、tosca.artifacts.nfv.SwImageのみとなった
    • SOL014 Virtual Resource Descriptorにおいて、Reservationが導入され、HOT::Blazarを利用できるようになった
    • SOL016 MANO Procedureにおいて、VNF SnapshotとVNF Snapshot Packageのシーケンスが追加となった
  • Release4 (コンテナ対応): v4.3.1として初版リリース
    • NFV006 Rel4のアーキテクチャ図によると、CIS (Container Infrastructure Service)、CISM (CIS Management)、CIR (Container Image Repository)、CCM(Container Cluster Management)が追加されている
    • FEAT17 SOL018 CISM(Container Infrastructure Service Management) IFがPublishされた
      • 7or8月にリリースされたSOL001/002/003/004/005/006/007/009/014と合わせて、コンテナ制御の基本仕様は完成
      • コンテナベースのVNFもSOL001/SOL004のVNFD&Packageで提供され、SOL002/003のVNF LCM APIにてVMベースと同じように制御可能
      • VM用のInfrastructureであるVIMと同様に、Container用のInfrastructureであるCISM/CIRが定義され、VNFM/NFVO⇔CISM間IFがSOL018にて制定
    • FEAT17 IFA036 CCM(CIS Cluster Manamgent) IFのStage2がFinalizeされ、Kubernetes Cluster API (CAPI)がStage3として提案中
      • CIS Cluster=CIS + CISMとして、CIS  Cluster自体のLCMを管理する機能部としてCCMが追加
      • NFVI+VIMの構築は現行のNFV仕様には存在しない(pre-configure)であるため、IFA036はインフラ自体を構築/削除する新しい試み
      • Pod単位の制御はIFA040/SOL018 CISM APIで提供され、CIS Cluster全体の制御(Cluster wideな制御)であるPrimary/Secondary Container Networkの構築やCRDのインストールはIFA036で行う
    • FEAT13 “Licensing”: 仕様リソースやインスタンス数ベースのVNFのライセンス管理
      • 既存NFV仕様とGAP分析したReportはIFA034として2021年10月に発行済みだが、Stage2以降の予定は未定 (進展なし)
    • FEAT19 “NFV Connectivity”: Container NetworkのNFVへの取り込み
      • IFA038をベースにContainer Networkの仕様(Primary Container Network/Secondary Container Network)はv4.3.1のStage2/3に盛り込み済
    • FEAT20 “Autonomous: LCMの自動化
      • IFA041をベースにIFA047にてMDAF (Management Data Analytics Function)のStage2作業中 (進展なし)
      • IntentのStage2は未
    • FEAT21 “NFV for 5G”: 5GCのNFVへの要件分析とその取り込み
      • IFA037をベースに既存IFの拡張中(進展なし)
    • FEAT23 “SBA”: NFVをSBAベースにすべきかどうかの検討
      • IFA039がFinal Reviewとなり、NFVのSBA化のRecommendationがほぼ完成
      • Step1: 重複仕様を削除し、NFV-S (NFV-MANO Service)とNFV-P(NFV-MANO Producer)の概念のみ導入 (ドキュメントの修正のみで実質的な仕様の変更はなし)
      • Step2: Rel5においてFunctional Blocks (NFVO/VNFM/VIM/WIM/CISM/CIR/CCM/NFVIなど)を廃止し、NFVの仕様はNFV-Sの定義のみとするが、既存仕様そのものは変更しない (アーキテクチャ図からFBが消えるので機能分担は変わるがAPIそのものは大きな変更はしない)
      • Step3: Common APIを導入し、類似のAPIはリファクタリングすることでMANOをFull SBA化する (既存仕様との互換性なし)
    • FEAT24 “Generic OAM”: Cloud-native時代のVNFの共通的なOAMの機能定義
      • EVE019をベースにIFA049にてStage2作業中
      • 機能部の定義とGeneric OAM APIの制定中
      • 今後Information Element、Descriptorも制定予定
      • Generic OAM ⇔ VNF間IFもIFA049のScopeのため、今後制定されるかも?
    • FEAT26 “Policy Models”: NFVにおけるECAベースの自動化 (仮想化と監視運用自動化を参照)
      • IFA023 (PolicyのUsecase)、IFA042 (既存仕様とIFA023のGAP分析)をベースにIFA048でPolicyの記述ルールのStage2制定中(Final Review中)
      • ONAP APEXのState-Taskの記述ベースに、Event(Policy起動のtrigger)-Condition(どのアクションを実行するか選択ための分析)-Action(実際に自動実行する処理)が実行可能なように仕様制定
      • Context (ConditionやActionでLogicで各種判断できるようにPolicyが起動された時の状況を保存)として、既存のAPIやDescriptorで取得可能なものは全てContextに入れる方針
      • Logicには各種プログラミング言語で記述可能な演算子やループなどが記述可能
  • Release5 (NFV対象ドメインの拡張): UsecaseのGAP分析が完了しRecommendation抽出中
    • FEAT27 “NFV for vRAN”: IFA046においてvRANのNFVへの要件分析とその取り込み
      • GAP分析、Solution、Recommendationまでほぼ完了しStable化
      • O-RAN WG6とNFVの対応づけはVNFM/VIM/CISM/WIMをO-Cloud、NFVO/OSS/EMをSMO
      • O2ims実現に向けて、PIM (Physical Infrastructure Manager)の導入が必要
      • S-Plane実現に向けて、WIMはTime Synchronization対応の拡張が必要
      • Near-RT RICのML(Machine Learning) ModelのPackage化のために、VNF  Packageの拡張が必要
      • AAL(Acceleration Abstraction Layer)の実現はO-RAN WG6の動向を踏まえて継続分析が必要
    • FEAT28 “Fault Model”: Alarmのアイテムの定義(Stage2)
      • NFVIの障害パターンからVirtual Resource (VR) Fault Management (FM)、VNF FMと通知されるUsecaseはAnnexに記述済み
      • Performance Management(PM)についてはIFA027で規定されていたが、FMはこれまでなかった
      • FaultType=Alarm Definition IdentifierとそのDescriptironはIFA045で規定し、Probable CauseやFault DetailsについてはIFA045でどこまで規定し、どこからRegistryで記載するか検討中
    • FEAT29 “Green NFV”: NFVにおける省電力の実現
      • 省電力モードやそのリカバリのUsecase (事前検討)
      • SolutionやGAP分析はこれから
    • FEAT30 “VNF Configuration”: VNF Configurationのリファクタリング
      • SOL002 Ve-VnfmによるVNF Configurationや、SOL014 VR DescriptorによるUser  Data (cloud-init)、EMからVNFのVNF Configuration、EVE019のVNF Configuration Management/Network Configuration Managementなどの多様なVNF向けConfigurationのリファクタリング
      • EVE022でDay-0/1/2 ConfigurationのUsecaseと各ルートでのVNF Configurationの仕様のGAP分析, Solution, 評価を実施しほぼStable
      • Configuration ServerをGeneric OAMに導入し、EMやNFV-MANOからVNF Configurationを格納する方向

Release 6

Release 6の仕様が利用される時代のETSI NFVを取り巻く世界についてWorkshopを実施した。具体的な仕様についてはRelease 5までかなり拡張されたことから、NFV仕様と周辺機関(Open Source、Cloud技術、他標準化団体)との関連について議論された。

  • Open SourceやCloud技術を”as is(=そのまま)”使うべきか、NFV標準仕様として規定すべきか?
  • VM -> Container -> Server less -> ..とインフラやVNFの実装形態が変化する中で、NFV仕様は何を決めるべきか?
  • 参加企業が減っているのにトータル寄書数は変わらない中で、本当にNFV仕様は品質を維持できているか?
  • MEC, ZSM, ENI, 3GPP, O-RAN, CNCFなどとJoint Workなどでしっかり連携し、NFVはそれらを“どう使うか=Profiling”に専念すべきではないか?
  • もっとTackerやOSMなどのOpen Sourceが即NFV仕様を利用できるように、それらが利用しやすい形態(Open APIやRobot FrameworkやSimulator)はないか?
また、具体的なRel6のNew Work Itemについても提案があった
  • 様々なタイプのData Center (High-Altitude Platform Station (HAPS), Unmanned Aerial Vehicles (UAV), Non-Terrestrial-Networks (NTN), Hyperscaler、metasurfaces など)
  • 新しいタイプのVNF (unikernel, serverless, Function as a Service (FaaS), sandbox, eBPFの集合体 など)
  • End To EndでのTime Sensitive Network (TSN)の管理
  • 原因切り分け/大規模災害時の復旧/新規サービスの正常性確認などのためのDigital Twin Networks
  • Block Chainなどを活用したConfigやFaultの管理

2016年にIFA029として開始したContainerの仕様は今回のSOL018のPublishによってやっと初版が完成した。早急にContainerの仕様をNFVがサポートできないとNFVは廃れると言われ続けながら仕様一式が完成するまで非常に長かった。テレコムの装置は単純にコンテナをDeployすれば良いというわけではなく、Networkや既存装置との接続、長期間安定的に利用するインフラなど、Kubernetesのコンセプトだけでは不足し追加すべき仕様が多々あった。今後はSOL016にContainerをDeployするときのProcedureを記載していきたい。

また今回はIFA046 NFV for vRANやEVE022 VNF Configurationなど、NFVを利用していく上で興味深い仕様検討も大きく推進し、間もなくFinalize&Publishされる。是非とも確認して頂きたい。

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